前駆陣痛とは? - 赤ちゃんを迎えるための「準備運動」
前駆陣痛とは、出産が近づいた頃に起こる不規則な子宮収縮のことで、体が出産に向けて行う「準備運動」のようなものです。
【前駆陣痛の主な特徴】
- 間隔がバラバラ:7分、11分、8分、13分…等と、痛みの間隔が不規則です。
- 痛みが続かない:しばらく続いたかと思うと、自然と痛みが遠のいたり、なくなったりします。
- 強弱がある:痛みを感じない時もあれば、少し強く感じる時もありますが、どんどん強くなることはありません。
前駆陣痛は、臨月(妊娠36週以降)に入ると感じやすくなりますが、始まる時期や頻度には個人差があります。「赤ちゃんが骨盤の中に降りてくる準備をしているんだな」という、体からのサインと受け止めましょう。
本陣痛とは? - いよいよ出産本番の「合図」
一方、本陣痛はいわゆる本物の陣痛のことで、出産を開始するための本格的な子宮収縮です。一度始まったら、赤ちゃんが生まれるまでおさまることはありません。
【陣痛の主な特徴】
- 間隔が規則的になる:10分以内の間隔で規則的にやってきます。
- 痛みがだんだん強く、長くなる:痛みの持続時間が長くなり、強さも増していきます。
- 休んでもおさまらない:姿勢を変えたり、歩いたりしても痛みは消えません。
痛みの感じ方は人それぞれで、「生理痛の重い感じ」「腰をハンマーで叩かれるような痛み」「下痢のときのような痛み」など様々です。どんな痛みであれ、「規則的で、だんだん強くなる痛み」が陣痛のサインです。
「陣痛かな?」と思ったら。まずは時間を測ってみましょう
陣痛が始まったら、まずは慌てずに時計やスマホで時間を測ってみましょう。正しく計測することで、前駆陣痛か陣痛かを見分けることができます。
計測するポイントは次の2つです。
- 陣痛の持続時間:お腹が張り始めて「痛い」と感じてから、痛みがスーッと引くまでの時間。
- 陣痛の間隔:ある陣痛の始まりから、次の陣痛の始まりまでの時間。(痛みが終わってから次に始まるまでの時間ではないので注意!)

記録のコツ
- 開始時間を見る:「◯時◯分」「次の痛みは◯時◯分」のように開始時間だけを確認すると、手軽に陣痛の間隔を知ることができます。
- 陣痛アプリを活用する:ボタンをタップするだけで持続時間と間隔を自動で計算・記録してくれるので非常に便利です。パートナーと共有できるアプリもあります。
一目でわかる!前駆陣痛と陣痛の見分け方
迷ったときは、この表でチェックしてみてください。
項目 | 前駆陣痛 | 陣痛 |
|---|---|---|
痛みの間隔 | 不規則(7分→11分→8分など) | 規則的(10分以内など一定) |
痛みの強さ | 強くならない、または不規則 | だんだん痛みが強くなる |
痛みの持続時間 | 短い、不規則 | 痛みのある時間が長くなってくる |
動きによる変化 | 姿勢を変えたり歩いたりするとおさまることがある | 動いてもおさまらない |
進行 | いつの間にか痛みが消える。または、そのまま陣痛になることもある。 | 止まることなく出産まで続く |
一番のポイントは、間隔が規則的かどうかです。まずは冷静に観察してみましょう。
病院に連絡するタイミングは? - 受診の目安
陣痛の間隔が規則的になったら、いよいよ病院へ連絡するタイミングです。ただし、初産婦さんか経産婦さんかによって目安の時間が異なります。
- 【初産婦さん】 陣痛の間隔が10分になったら
- 【経産婦さん】 陣痛の間隔が15分になったら(お産の進みが早いことがあるため)
上記の時間になったら、まずはお電話ください。
※陣痛以外でも、すぐに連絡が必要なケース
以下の症状が見られる場合は、陣痛が来ていなくても、すぐに病院へ連絡してください。
- 破水したとき:水っぽいおりものが流れ出た場合。入浴はせず、清潔なナプキンを当ててすぐにご連絡ください。
- 出血が多いとき:生理2日目以上の量の鮮血が出た場合。(「おしるし」と呼ばれる少量の出血とは異なります)
- 胎動を感じない・急に弱くなったとき
- いつもと違う強いお腹の張りや痛みがあるとき
「これくらいで電話していいのかな?」と迷う必要はありません。 あなたと赤ちゃんの安全が最優先です。不安なときは、ためらわずにいつでもご連絡ください。
陣痛が来たときの過ごし方
前駆陣痛のとき
まだ本番ではありません。これからの陣痛に備えて、体力を温存しましょう。
- お風呂にゆっくり浸かる(※破水していない場合)
- 眠れるようなら横になって休む
- 寝不足や眠気がなければ、ウォーキングやストレッチ、階段昇降、スクワットなどで子宮収縮を促進するよう身体を動かす
- 出産に備えて、消化の良いものを食べておく
本陣痛が始まってから(病院に行くまで)
痛みの波の合間に、できるだけリラックスして過ごしましょう。
- 呼吸を意識する:「フーッ」と長く息を吐くことに集中すると、痛みが和らぎます。
- 楽な姿勢を見つける:クッションを抱えたり、四つん這いになったり、自分が一番楽だと感じる姿勢を探しましょう。
- 水分補給をこまめに:陣痛は体力勝負です。ストローがあると、横になったままでも飲みやすいです。
- パートナーにサポートしてもらう:腰をさすってもらったり、テニスボールで肛門のあたりを圧迫してもらったりすると、痛みが緩和されることがあります。

妊婦さんからよくあるご質問(FAQ)
Q. 前駆陣痛はどのくらい続きますか?
A. 数時間で終わることもあれば、数日間続いたり、一度おさまってまた始まったりと、人によって様々です。終わりが見えないと不安になるかもしれませんが、これも出産に向けた大切な準備期間です。
Q. 前駆陣痛がなく、いきなり陣痛が来ることもありますか?
A. はい、あります。前駆陣痛をはっきりと感じないまま、規則的な本陣痛からお産が始まる方もいらっしゃいます。
Q. 夜中に前駆陣痛で眠れません。どうしたらいいですか?
A. 体を温めると、筋肉の緊張がほぐれて眠りやすくなることがあります。足浴をしたり、痛みのある箇所を温めたりするのがおすすめです。
Q. 「おしるし」があったら、もうすぐ陣痛が来ますか?
A. おしるし(少量の血液が混じったおりもの)は出産が近いサインの一つですが、おしるしがあってから数日〜1週間後に陣痛が始まる方もいれば、陣痛が始まってからおしるしがある方もいます。おしるしのみの場合は、受診も入院も必要はありません。慌てず、陣痛が規則的になるのを待ちましょう。

まとめ:不安なときは一人で悩まず、かかりつけの産院へ連絡しましょう
- 前駆陣痛:不規則で、いずれおさまる出産の準備運動
- 陣痛:規則的で、だんだん強くなる出産の合図
- 陣痛が来たら、まずは「持続時間」と「陣痛の間隔」を測りましょう
- 病院への連絡は、初産婦さんなら10分間隔、経産婦さんなら15分間隔が目安
- 破水や多い出血、胎動減少など、いつもと違う変化があればすぐに連絡を
妊娠後期は、期待と同時に不安も大きくなる時期です。「これって本陣痛かな?」「なんだかいつもと違うかも…」そんなときは、一人で抱え込まず、いつでもお電話ください。24時間体制で、助産師が丁寧にお話を伺います。
【監修】
医療法人育愛会 愛産婦人科
院長 菅原 正樹
札幌市手稲区の産婦人科 医療法人育愛会 愛産婦人科 院長の菅原です。 私たちは、女性のあらゆるライフステージに寄り添い、一人ひとりのお悩みに応える医療を大切にしています。妊娠中の心配ごとや出産に関するお悩みなど、どうぞお気軽にご相談ください。





