
【助産師解説】入院中に涙が止まらない…「マタニティブルーズ」とは?ホルモンの急激な変化と対処法
「赤ちゃんは可愛いし、出産も無事に終わった。幸せなはずなのに、なぜか涙が止まらない…」 「ふとした瞬間に、強烈な不安に襲われる」 出産直後、特に入院中の2日目〜4日目あたりに、このような情緒不安定な状態になることがあります。 自分でも理由がわからず、「私、母親失格なのかな?」と自分を責めていませんか? 実はそれ、あなたの性格のせいではありません。 産後のママの30〜50%(2〜3人に1人)が経験するマタニティブルーズという生理現象です。 今回は、なぜ産後に心が揺れ動くのか、その医学的な理由と、辛い時の乗り越え方を助産師が解説します。
1. なぜ?「マタニティブルーズ」の原因はホルモン
マタニティブルーズの正体は、急激なホルモン変化による脳のパニック状態です。
妊娠中、お腹の赤ちゃんを育てるために、女性ホルモン(エストロゲン・プロゲステロン)は通常の何十倍、何百倍にも増えています。
しかし、出産して胎盤が体の外に出た瞬間、このホルモンは崖から転がり落ちるように急激に減少し、ほぼゼロに近い状態になります。
よく「ジェットコースター並みの変化」「交通事故に遭ったのと同じレベルの衝撃」と表現されますが、これほど急激な変化に脳と自律神経がついていけず、一時的に情緒不安定になってしまうのです。

2. こんな症状はありませんか?
マタニティブルーズは、産後3日目〜1週間頃をピークに現れます。
- 涙もろくなる(嬉しいわけでも悲しいわけでもないのに泣ける)
- 不安感(「ちゃんと育てられるかな」と急に怖くなる)
- イライラする(夫の何気ない一言に腹が立つ)
- 集中力の低下(説明を聞いても頭に入らない)
- 不眠(疲れているのに眠れない)
これらは病気ではなく、ホルモンバランスが整うまでの一時的な反応です。
「今はホルモンの嵐の中にいるんだ」と割り切って考えてみてください。
3. 入院中・退院後に辛くなった時の対処法
「泣いちゃダメだ」と我慢するのは逆効果です。以下の3つを意識して過ごしてみてください。
① 「泣く」のは心のデトックス
涙が出そうになったら、思いっきり泣いてしまいましょう。
涙にはストレス物質を体の外に出す働きがあります。我慢せずに泣くことで、副交感神経が働いてリラックスできることもあります。
辛い時はナースコールを押したり、スタッフに声をかけたりしてくださいね。『ただ誰かに話を聞いてほしい』『背中をさすってほしい』だけでも大丈夫です。
② 睡眠を最優先にする
ホルモンの変化に加え、「出産による疲労」と「睡眠不足」が重なると、メンタルはさらに落ち込みます。
赤ちゃんが寝たら、スマホを見ずに一緒に横になりましょう。
入院中であれば、「今日は辛いので赤ちゃんを預かってほしい」と助産師に伝えて、数時間でもぐっすり眠る時間を確保してください。ママの休息は、赤ちゃんへの愛情不足ではありません。
③ ママの笑顔が、赤ちゃんの一番の栄養
睡眠不足や不安でママの心がカラカラに乾いている状態では、赤ちゃんに愛情を注ぐ余裕もなくなってしまいます。
まずは自分の体と心を整えることを最優先にしてください。 あなたが心穏やかで幸せな気持ちでいることが、赤ちゃんにとっても何よりの安心材料になります。「赤ちゃんのために、まずは私が休む」。そう考えて、自分を労ってあげてくださいね。
4. 「産後うつ」との違いは?
マタニティブルーズは一過性のもので、通常は産後2週間〜1ヶ月程度で自然に落ち着いてきます。
しかし、以下のような状態が2週間以上続く場合は、「産後うつ病」の可能性があります。
- 赤ちゃんが可愛いと思えない、興味がわかない
- 「消えてしまいたい」と思う
- 食欲がない、眠れない状態がずっと続く
- 一日中気分が沈んでいて、何をしても楽しくない
この場合は、専門家のサポートが必要です。
「こんなこと相談していいのかな?」と思わず、産婦人科の医師や助産師、地域の保健師に必ず相談してください。
まとめ
入院中に涙が出るのは、あなたが一生懸命出産を乗り越え、母になろうと体が変化している証拠です。
決して「弱い」からでも「性格が悪い」からでもありません。
「今はホルモンのせいで、心がちょっと風邪をひいているだけ」
そう思って、自分を責めずに、今の感情をそのまま受け止めてあげてくださいね。
私たち助産師は、いつでもあなたの味方です。辛い時はナースコールを押して、話を聞かせてください。
【監修】
医療法人育愛会 愛産婦人科




