
【医師監修】婦人科の症状別ガイド|こんな症状があったら受診を|原因と対処法を解説
「これって婦人科に行くべき症状なのかな?」と迷ったことはありませんか? 生理痛、不正出血、おりものの異常、下腹部痛など、女性特有の体の悩みは多岐にわたります。しかし、「このくらいで病院に行っていいのかな」「恥ずかしい」といった理由で、受診をためらう方も少なくありません。 この記事では、婦人科を受診すべき代表的な症状と、それぞれの原因や対処法について、産婦人科医の視点から分かりやすく解説します。あなたの体からのサインを見逃さないために、ぜひ参考にしてください。
婦人科を受診すべき症状チェックリスト
以下の症状に当てはまるものがあれば、婦人科の受診をおすすめします。
月経に関する症状
- 生理痛がひどく、日常生活に支障がある
- 市販の鎮痛剤が効かない
- 月経量が異常に多い、または少ない
- 月経周期が不規則(24日以内、または39日以上)
- 2ヶ月以上月経が来ない
- 月経期間が長い(8日以上)、または短い(2日以内)
出血に関する症状
- 月経以外の時期に出血がある(不正出血)
- 性交後に出血する
- 閉経後に出血がある
おりものに関する症状
- おりものの色が黄色、緑色、茶色などに変わった
- おりものの量が急に増えた
- 悪臭がする
- 外陰部にかゆみがある
痛みに関する症状
- 下腹部痛が続く
- 性交時に痛みがある
- 排便時に痛みがある
- 腰痛がひどい
その他の症状
- 月経前にイライラや気分の落ち込みが激しい(PMS)
- ほてり、のぼせ、発汗などの更年期症状がある
- 妊娠を希望しているが、1年以上妊娠しない
「自分の症状は大したことない」と思わず、気になる症状があれば気軽にご相談ください。

症状別:原因と対処法
1. 生理痛がひどい
どんな症状?
- 下腹部の激しい痛み
- 腰痛
- 吐き気、嘔吐、下痢
- 起き上がれないほどの痛み
- 鎮痛剤を飲んでも効かない
考えられる原因
機能性月経困難症
- 子宮を収縮させる物質(プロスタグランジン)の過剰分泌
- 10代〜20代に多い
器質性月経困難症
- 子宮内膜症
- 子宮筋腫
- 子宮腺筋症
- 20代後半以降に多く、年齢とともに悪化する傾向
こんな時はすぐ受診
- 学校や仕事を休むほどの痛み
- 年々痛みが強くなっている
- 月経以外の時期にも下腹部痛がある
- 妊娠を希望しているが授からない
治療法
- 鎮痛剤(NSAIDs):痛みが出る前に服用するのがポイント
- 低用量ピル:排卵を抑制し、痛みを軽減
- IUS(ミレーナ):子宮内に装着するホルモン放出システム
- 漢方薬
- 手術療法(重症例)
自分でできる対処法
- お腹や腰を温める
- 適度な運動やストレッチ
- 十分な睡眠
- ストレス管理
2. 月経量が多い・少ない
月経量が多い(過多月経)
どんな症状?
- 1〜2時間ごとにナプキンを替える必要がある
- 夜用ナプキンでも漏れてしまう
- レバーのような血の塊が出る
- 立ちくらみ、めまい、息切れ(貧血症状)
考えられる原因
- 子宮筋腫
- 子宮腺筋症
- 子宮内膜ポリープ
- ホルモンバランスの乱れ
治療法
- ホルモン療法(低用量ピル、黄体ホルモン剤)
- IUS(ミレーナ)
- 鉄剤の補給
- 手術療法(筋腫核出術、ポリープ切除など)
月経量が少ない(過少月経)
どんな症状?
- ナプキンがほとんど汚れない
- 1〜2日で終わってしまう
考えられる原因
- ホルモンバランスの乱れ
- 無排卵
- 早発卵巣不全
- 子宮内膜の癒着(アッシャーマン症候群)
こんな時は受診を
- 妊娠を希望している
- 急に月経量が減った
- 他の症状(体重増加、むくみ、疲労感など)がある
3. 月経周期が不規則
どんな症状?
- 月経が24日以内で来る(頻発月経)
- 月経が39日以上空く(希発月経)
- 周期がバラバラで予測できない
- 2ヶ月以上月経が来ない(無月経)
考えられる原因
- ストレス
- 過度なダイエットや激しい運動
- 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
- 甲状腺機能異常
- 高プロラクチン血症
- 早発卵巣不全
- 更年期の始まり
こんな時はすぐ受診
- 2ヶ月以上月経が来ない
- 妊娠を希望している
- 体重の急激な変化、体毛の増加、ニキビなどの症状がある
治療法
- 原因に応じたホルモン療法
- 生活習慣の改善
- ストレス管理
- 適正体重の維持
4. 不正出血
どんな症状?
- 月経以外の時期に出血がある
- 性交後に出血する
- おりものに血が混じる
出血の色から考えられること
鮮紅色(鮮血)
- 子宮頸管ポリープ
- 子宮頸部びらん
- 性交時の傷
茶褐色・黒っぽい
- 排卵期出血
- 着床出血
- 子宮内膜症
黄色・緑色
- 感染症(子宮内膜炎、性感染症)
考えられる原因
病気によるもの(器質性出血)
- 子宮頸がん・子宮体がん
- 子宮頸管ポリープ
- 子宮筋腫
- 子宮内膜ポリープ
- 子宮内膜症
- 感染症(クラミジア、淋菌など)
ホルモンバランスの乱れ(機能性出血)
- 排卵期出血(中間期出血)
- ストレス
- 無排卵
こんな時はすぐ受診
- 閉経後の出血
- 性交後に毎回出血する
- 大量の出血
- 2週間以上だらだらと続く出血
- 悪臭を伴う出血
- 下腹部痛や発熱を伴う
治療法
- 原因となる病気の治療
- ホルモン療法
- ポリープの切除
- がんの場合は専門的治療
5. おりものの異常
正常なおりものとは?
- 色:透明〜白っぽい、クリーム色
- 量:下着が少し湿る程度
- におい:無臭、またはわずかに酸っぱい匂い
- 周期による変化:排卵期は量が増え、卵白のように透明で伸びる
異常なおりもののサイン
黄色・緑色のおりもの
- 細菌性腟症
- トリコモナス腟炎
- 淋菌感染症
- 子宮頸管炎
白くてポロポロしたおりもの(カッテージチーズ状)
- カンジダ腟炎
- 外陰部の強いかゆみを伴う
血が混じったおりもの
- 子宮頸がん
- 子宮内膜ポリープ
- 子宮頸管ポリープ
水っぽいおりものが大量に出る
- 子宮体がん
- クラミジア感染症
悪臭がする
- 細菌性腟症
- トリコモナス腟炎
- 子宮内に異物がある
こんな時は受診を
- おりものの色、量、においが明らかにいつもと違う
- かゆみや痛みを伴う
- 性交渉後に症状が出た
- パートナーにも症状がある
治療法
- 抗真菌薬(カンジダの場合)
- 抗生物質(細菌感染の場合)
- 腟錠や軟膏
- 性感染症の場合はパートナーも治療が必要
予防法
- 通気性の良い下着を選ぶ
- 洗いすぎない(腟内は洗わない)
- ナプキンやおりものシートをこまめに替える
- 性交時はコンドームを使用
6. 下腹部痛・骨盤痛
どんな症状?
- 下腹部の鈍い痛み
- チクチクした痛み
- 引きつるような痛み
- 持続的な痛み、または間欠的な痛み
考えられる原因
月経に関連した痛み
- 月経困難症
- 排卵痛
- 子宮内膜症
感染症による痛み
- 骨盤内炎症性疾患(PID)
- 子宮内膜炎
- 付属器炎
腫瘍による痛み
- 子宮筋腫
- 卵巣嚢腫
- 卵巣腫瘍
その他
- 卵巣出血
- 卵巣嚢腫茎捻転(緊急手術が必要)
- 子宮外妊娠(緊急治療が必要)
- 便秘
- 膀胱炎
こんな時はすぐ受診・救急外来へ
- 突然の激しい痛み
- 冷や汗、吐き気、嘔吐を伴う
- 発熱を伴う
- 立っていられないほどの痛み
- 妊娠の可能性がある時の痛み
治療法
原因によって異なりますが、主に以下の通りです。
- 鎮痛剤
- 抗生物質(感染症の場合)
- ホルモン療法
- 手術療法(緊急性がある場合、腫瘍が大きい場合など)
7. 性交痛
どんな症状?
- 性交時に痛みがある
- 挿入時に痛い
- 奥を突かれると痛い
- 性交後も痛みが続く
考えられる原因
身体的な原因
- 腟の乾燥(更年期、授乳中、ストレス)
- 萎縮性腟炎(閉経後)
- 子宮内膜症
- 卵巣嚢腫
- 骨盤内炎症性疾患
- 外陰部の炎症や傷
心理的な原因
- 緊張
- 不安
- 過去のトラウマ
- パートナーとの関係性
治療法
- 潤滑ゼリーの使用
- ホルモン補充療法(更年期の場合)
- 炎症や感染症の治療
- カウンセリング
- パートナーとのコミュニケーション
我慢せずに相談を
性交痛はデリケートな悩みですが、決して恥ずかしいことではありません。適切な治療で改善できることが多いので、ぜひご相談ください。

8. 外陰部のかゆみ・痛み
どんな症状?
- 外陰部がかゆい
- ヒリヒリする
- 痛みがある
- 腫れている
考えられる原因
- カンジダ腟炎
- 細菌性腟症
- トリコモナス腟炎
- 接触性皮膚炎(下着、ナプキン、石鹸などへのかぶれ)
- 萎縮性外陰腟炎(更年期以降)
- 性器ヘルペス
- 尖圭コンジローマ
こんな時は受診を
- かゆみが強く、日常生活に支障がある
- 市販薬で改善しない
- 水ぶくれやイボができている
- おりものの異常を伴う
治療法
- 原因に応じた薬物療法(抗真菌薬、抗生物質、抗ウイルス薬)
- ステロイド軟膏(皮膚炎の場合)
- 原因となる刺激物の除去
自分でできる対処法
- 通気性の良い下着を着用
- きつい衣類を避ける
- 刺激の少ない石鹸を使う
- 洗いすぎない
- ナプキンやおりものシートをこまめに替える
9. 月経前症候群(PMS)・月経前不快気分障害(PMDD)
どんな症状?
身体的症状
- 乳房の張り、痛み
- 頭痛
- むくみ
- 腹部膨満感
- 体重増加
- 疲労感
精神的症状
- イライラ
- 気分の落ち込み
- 不安
- 情緒不安定
- 集中力の低下
- 睡眠障害
PMSとPMDDの違い
- PMS:月経前3〜10日間に身体的・精神的症状が現れ、月経開始とともに軽快する
- PMDD:PMSよりも精神症状が重く、日常生活や人間関係に深刻な影響を及ぼす
こんな時は受診を
- 症状が重く、仕事や日常生活に支障がある
- 人間関係に悪影響が出ている
- うつ状態が続く
- 自傷行為や希死念慮がある
治療法
- 低用量ピル
- 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI):PMDDの場合
- 漢方薬(加味逍遙散、桂枝茯苓丸など)
- ビタミンB6、カルシウム、マグネシウムのサプリメント
生活習慣での改善法
- 規則正しい生活
- 適度な運動
- カフェイン、アルコール、塩分を控える
- ストレス管理
- 十分な睡眠
10. 更年期症状
どんな症状?
血管運動神経症状
- ほてり(ホットフラッシュ)
- のぼせ
- 発汗
- 動悸
精神神経症状
- イライラ
- 不安
- 抑うつ
- 不眠
- 集中力低下
- 記憶力低下
身体症状
- 肩こり、腰痛
- 関節痛
- 疲労感
- 頭痛
- めまい
- 頻尿
その他
- 腟の乾燥
- 性交痛
- 皮膚の乾燥
- 体重増加
更年期とは?
閉経前後の約10年間(一般的に45〜55歳頃)を指します。女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が急激に減少することで、様々な症状が現れます。
こんな時は受診を
- 症状が日常生活に支障をきたしている
- うつ状態が続く
- 他の病気との区別が必要
治療法
ホルモン補充療法(HRT)
- 最も効果的な治療法
- のみ薬、貼り薬、塗り薬がある
- 定期的な検診が必要
漢方薬
- 加味逍遙散
- 当帰芍薬散
- 桂枝茯苓丸など
その他の薬物療法
- 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)
- 抗不安薬
生活習慣の改善
- バランスの良い食事(大豆製品、カルシウムを積極的に)
- 適度な運動
- 十分な睡眠
- ストレス管理
- 禁煙
11. 不妊の悩み
不妊とは?
妊娠を希望し、避妊せずに性生活を行っているにもかかわらず、1年以上妊娠しない状態を不妊といいます。
こんな時は早めに受診を
- 1年以上妊娠しない
- 35歳以上で半年以上妊娠しない
- 月経不順がある
- 過去に骨盤内感染症や手術歴がある
- パートナーに精液所見の異常がある可能性
不妊の原因
女性側の原因
- 排卵障害(多嚢胞性卵巣症候群、高プロラクチン血症など)
- 卵管閉塞・癒着
- 子宮因子(子宮筋腫、子宮内膜ポリープなど)
- 子宮内膜症
- 加齢による卵巣機能低下
男性側の原因
- 造精機能障害
- 性機能障害
- 精路閉塞
原因不明 約10〜20%は原因が特定できません。
検査
- ホルモン検査
- 超音波検査
- 子宮卵管造影検査
- 精液検査(パートナー)
治療法
原因に応じて以下のような治療を行います。
- タイミング法
- 排卵誘発
- 人工授精
- 体外受精
- 手術療法

年代別:気をつけたい症状
10代〜20代前半
- 月経不順
- 生理痛
- 避妊・性感染症の予防
20代後半〜30代
- 子宮頸がん検診
- 子宮内膜症
- 不妊
- 妊娠・出産
40代〜50代前半
- 更年期症状
- 子宮筋腫
- 子宮体がん検診
- 乳がん検診
50代後半以降
- 閉経後の不正出血
- 骨粗鬆症
- 萎縮性腟炎
- 子宮脱・膀胱脱
婦人科受診のポイント
受診前に準備すること
- 最終月経日を確認
- 症状をメモしておく
- 基礎体温をつけている場合は持参
- 服用中の薬があれば伝える
内診について
- すべての診察で内診が必要なわけではありません
- 未経験の方、抵抗がある方は事前に伝えてください
- 超音波検査は腹部からも可能です
リラックスして受診を
婦人科は女性の健康を守る専門科です。どんな症状でも、恥ずかしがらずにご相談ください。私たちは、あなたの悩みに真摯に向き合います。
まとめ
- 婦人科を受診すべき症状は多岐にわたります
- 「このくらいで…」と我慢せず、気になる症状があれば受診を
- 早期発見・早期治療が、あなたの健康を守ります
- 定期的な婦人科検診(子宮頸がん検診など)も忘れずに
- 婦人科は女性の一生に寄り添うパートナーです
あなたの体からのサインを見逃さないでください。少しでも気になる症状があれば、ぜひ私たち婦人科医にご相談ください。
【監修】 医療法人育愛会 愛産婦人科 院長 菅原 正樹
札幌市手稲区の産婦人科 医療法人育愛会 愛産婦人科 院長の菅原です。私たちは、女性のあらゆるライフステージに寄り添い、一人ひとりのお悩みに応える医療を大切にしています。どんな症状でも、お気軽にご相談ください。
愛産婦人科 011-676-1166 お電話でのご予約も受け付けております




